NINE CARD SORT
2026-06-30 00:00 · 1738 words · 4 minute read
きっかけ — ゲムマの行列から生まれたゲーム
ゲームマーケットに参加していると、開場前に長い行列ができることがある。立ったまま、何十分も待つあの時間。そこで遊べるゲームを作りたいと思ったのがそもそものはじまりだった。
「テーブルなしで、立ったまま、一人で遊べるパズルカードゲーム」というコンセプトはそこから生まれた。以前、電車をテーマにした一人用パズルゲームを見かけたことがあって、そういった発想が頭の片隅にあったことも影響しているかもしれない。
カードの枚数は9枚に落ち着いた。特別な理由があるわけではない。7枚だと少ない気がして、11枚だと多い気がして、その間を取ったら9枚になった。そういう感覚的な選択だった。
設計の核心 — ルービックキューブ的なジレンマ
9枚のカードを順番通りに並べ直す。ゲームの目的はシンプルだが、ただ並べるだけではゲームにならない。
目指したのはルービックキューブのような感覚だ。一面を揃えようとすると別の面が崩れる。あのジレンマがパズルの面白さの核心だと思っている。NINE CARD SORTでも、カードの能力を使うと一部は揃うが他が崩れる、というメリットとデメリットのバランスをどう設計するかが、ずっと頭の中にあった課題だった。
放置と完遂
大枠のルールは比較的早い段階でできた。しかしカードの能力がなかなか決まらなかった。面白いデメリットが思いつかないのだ。そのまま棚に上げた状態がしばらく続いた。
結果として、納得のいく能力構成にはたどり着けなかったと思っている。通常のゲーム制作なら、没にしていたかもしれない。
それでも完遂できたのは、このプロジェクトの目的が「AIを活用したデジタル移植のチャレンジ」だったからだ。ゲームの完成度よりも、AIとどう協業できるかを試すことが主眼だった。まぁまぁのところまでできた、というのが正直な評価だ。
そんな中、8番カードの能力だけは手応えを感じている。8番は自分自身が上下反転する能力を持つ。正位置で使うとカードが逆位置になり、逆位置で使うと任意のカードを任意の位置に移動して正位置に戻る。向きによって異なる2つの能力を持つカードだ。これは救済措置として機能していて、8番を使い続ければ必ずクリアできる。一方で、8番だけに頼っていると1回の移動に2手かかるため手数がどんどん増えていく。「クリアは保証するが効率は落ちる」というバランスは、このゲームらしいジレンマになっていると思っている。
AIとの協業で見えたこと
世間で「Claude Codeを使えばゲームが作れる」という話が広まったころ、自分も試してみようと思った。ちょうど棚に眠っていたNINE CARD SORTが題材として浮かんだ。カード枚数が少ないこと、コアルールがシンプルなこと、しかしカードの能力をコードで表現しようとすると複雑になること、そして数字だけのデザインなのでイラストが不要なこと。デジタル移植の題材として条件がそろっていた。
AIとの協業を通じて、得手不得手がはっきり見えた。
コードの実装はスムーズだった。ゲームロジックの実装において、Claude Codeは頼りになるパートナーだった。命名のセンスも悪くなかった。一方でUIの装飾イラストは苦手だったので、そちらはGeminiを使った。
最も印象的だったのは、カードの能力設計を試みたときだ。面白いメリット・デメリットのバランスを持った能力を考えてもらおうとしたが、何度やりとりを重ねても、面白いものは出てこなかった。
「面白い」をAIに説明するのは難しい。プロンプトで「メリットとデメリットのバランスを持たせてほしい」と伝えることはできる。しかし、それが本当に面白いかどうかを判断する基準を、AIは持っていない。面白さとは、プレイしたときの身体的な手応えや、「あ、これだ」という感覚から来るものだ。それは人間が身体を持つことで初めて感じられるものなのだと、このチャレンジを通して実感した。
作業中にClaude Designが発表されたが、それはまだ試していない。AIの進化は速く、今この文章を書いている時点でも状況は変わり続けている。それでもこの時点での「AIと一緒にゲームを作る」体験は、記録しておく価値があると思っている。